ホーム  お知らせ   Barrow Neurological Instituteでのpostdoctoral fellowship(内川裕貴)

NEWSお知らせ

Barrow Neurological Instituteでのpostdoctoral fellowship(内川裕貴)

I. はじめに
 2022年4月より2024年3月にかけて, アメリカのアリゾナ州フェニックスにあるBarrow Neurological Institute (BNI) でpostdoctoral research fellowとして留学してきました. BNIは脳神経疾患に特化した世界最大の施設で, 臨床だけでなく研究も高いレベルにあります. 留学したHashimotoラボは, 日米の麻酔科医兼ラボのPIを務める橋本友紀先生の下, 彼の開発した脳動脈瘤マウスモデルを使って動脈瘤の破裂メカニズムや薬理学的な破裂予防の研究を行っております(Fig.1).
II. 研究について
 ラボの柱としては脳動脈瘤の研究なのですがそれだけではなく, SAHや脳虚血, AVMの研究も他の大学やラボともコラボレーションしながら手広く行っておりました. 私の具体的な研究テーマは, ①クローン性造血と脳動脈瘤 ②老化, アンチエイジングと脳動脈瘤 ③新規抗酸化薬による脳梗塞、くも膜下出血の治療 などで、その他④虚血負荷に対する脳血管リモデリング ⑤血行力学的ストレスと脳動脈瘤なども行いました. 日本との一番の違いは研究費です. 我々ポスドクにも研究費を獲得できるチャンスが多くあり, 私もBrain Aneurysm Foundationという脳動脈瘤とSAHに特化した研究費を獲得いたしました (Fig.2) .
III. 研究以外での経験について
 BNIは脳神経外科手術で非常にハイレベルな施設です. 手術は自由に見学することができ, Dr. Lawtonの手術も研究の合間に見に行くことができました. Cadaver courseも年何回か開催されており, 研究しながら臨床のトレーニングのチャンスも得ることができます. Dr. LawtonやDr. Spetzlerと話す機会もあり, 一緒に写真も撮ってもらいました (Fig.3).
IV. アメリカでの生活について
 私は英語が非常に苦手で慣れるのに時間がかかりましたが, アメリカの生活は非常にエキサイティングでした. 家族もアメリカ生活をエンジョイしており, 妻も子供も日本に帰りたくないと常々漏らしていました. 学会や旅行で色々な土地に行きましたが, 特にアメリカの大自然は圧巻で, 日本にはないような雄大な景色がいろんな場所にあります. アリゾナ州内のグランドキャニオン, セドナ, モニュメントバレー, アンテロープキャニオンはもちろん, ザイオン, イエローストーン, ホワイトサンズなどに行きましたが, いずれも最高の景色でした(Fig.4). 苦労したこととしては金銭面です. 円安+インフレが直撃し, 金銭的に苦しかったのは間違いありません. しかし, アメリカでの留学生活は何事にも代えがたい貴重な経験になりました.
V. おわりに
 帰国して臨床に戻り, なかなか雑務で忙殺されて研究をできておりませんが, 留学の経験を活かし, 研究費は1000万円ほど獲得出来ました. これを元手に, 自分の研究をさらに進めていこうと思います. 研究においては, 同門の長谷川雄先生, 岳元裕臣先生, 亀野功揮先生より, 留学前から今に至るまで, 様々なご指導をいただきました. そして, 武笠晃丈教授には, わがままを言って様々な場所で学ぶ機会を与えていただきました. この場をお借りして深く感謝いたします. この記事が留学を希望している若い先生方の背中を押すものになれば幸いです. もし研究や留学に興味がある方がいらっしゃれば, どうぞ気軽にご連絡ください.


Fig.1 ラボメンバーでの飲み会.


Fig.2 Brain Aneurysm FoundationのResearch Grant Symposiumにて.


Fig.3 BNIにて開催されたCadaver courseにて. 講演前のDr. Spetzlerと, Dinner席でDr. Lawtonと.


Fig.4 旅行で行った各地の写真. イエローストーン, ホワイトサンズ, ザイオン, モニュメントバレー, アンテロープキャニオン, グランドキャニオンなど.